大体が突然

春に会える君を追い求めながら、光の渦へと

つい昨日から、ピアノを弾き始めた。

留学中の寮に、一台設置してある電子ピアノだ。

普段は、ほぼ誰も使っていない。自習室のようなところにあるので、基本的にヘッドホンをして演奏しなくてはならない。

この調子だと毎日弾き続けそうだが、あの東洋人また来てるな、なんて他の人に覚えられそうな気がしている。

 

 

ピアノを習っていたのは、中一から高二ごろまでだ。大学受験を機にやめた。

始めるのが遅かったのもあり、指は硬かったし、そもそも手が小さかったし、あんまりちゃんと練習できなかった(しなかった)から、そんなに上手いとは言えないと思う。

音感があるわけでもないので(その辺の区別はよくわからないのだが)、耳コピもできない。

それなりに曲を弾いたし、少しだけ発表会に出たけれど、ほとんどの曲は忘れてしまった。

 

ただ、一曲だけ諳んじている曲がある。

 

 

関ジャニ∞ツブサニコイ』(2011)

 

 

この曲は、買ってもらったピアノ雑誌に載っていて、よく弾いていた。

特に先生に指導を受けたわけではないので、自分で練習したのだが、楽譜が少し簡単だったり、ロッカバラードというやつ(その辺も詳しくないのでわからない)だったり、三連符を基軸に置いていたりして、妙に弾きやすい気がして、気に入って弾いていた。

 

盛り上がりもわかりやすいし、原曲はストリングスがとても綺麗だ。

関ジャニ∞の熱のこもったボーカルも、歌詞の不器用な世界観と良く合っている。

 

 

この曲には、色々な思い出がある。

 

祖父母の家に、小さいけれど本物のピアノがあり、訪れる度に弾いていた(今も弾いている)こと。

関ジャニ∞がこの曲を初披露したMステでは、大サビで大コケした人がいたこと。

一時期の関ジャニ∞は、ライブで繰り返し繰り返しこの曲をやっていて、「もうバラードはいいよ~」と友人たちと話していたこと。でも、ライブでこの曲が流れる時は、いつも美しい演出だったこと。

高校の友人二人が、春休みに家にやってきて、ボーカル・ギター・ピアノのセッションをするも、私が練習不足で途中離脱したこと。

大学受験で一週間も家から出ない日々が続き、慢性的な頭痛を持っていた時も、たまに弾いていたこと。

 

 

ピアノを弾くことで、弾いているということ、そしてその音楽以外の他のことを、全て忘れることができた。

他の楽器も、そうなのかもしれない。

 

 

もっと多くの思い出があったはずなのだが、かなしいことに忘れてしまった。

思い出は、いつも決して甘いものではなく、ほろ苦いものもたくさんある。

ただ、全てやさしい光を湛えながら、私の中に残っている。

 

関ジャニ∞は、常に私の人生とともにあった。

短いが、若くてまぶしい季節。

 

 

昔は、朝や昼休みや放課後に学校で集まっておしゃべりしていた、身近なエイターたちも、ある程度大人になり、離れ離れに、忙しくなってしまった。

色々な問題を、ある程度は自分で乗り越えなくてはならない。

 

この時期に、ピアノが近くにあって、一曲だけでも曲を覚えていて、しかもその曲が関ジャニ∞の曲で、良かったと思う。

とは言え、要所要所忘れてしまっているので、YouTubeにあがっている素敵な演奏と照らし合わせながら、思い出していくしかないけれど、その探り探りの作業も楽しい。

 

何より、一人でも、偲ぶことができる。

 

 

今は、『ツブサニコイ』を弾き続けながら、ゆっくり消化していく。